この記事を読むとわかること
- アルバイトが社会保険に加入する条件
- 「106万円の壁」「130万円の壁」の影響
- 社会保険のメリット・デメリットと回避方法
アルバイトの社会保険加入条件とは?
アルバイトでも一定の条件を満たすと、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する義務が生じます。
特に「勤務時間・労働日数」「収入基準(106万円・130万円の壁)」が重要なポイントです。
ここでは、それぞれの条件について詳しく解説します。
① 勤務時間と労働日数の条件
アルバイトが社会保険に加入するための基本条件の一つは、勤務時間と労働日数が正社員の4分の3以上であることです。
具体的には、以下のような基準が適用されます。
- 週の所定労働時間が正社員の4分の3以上(例:正社員が40時間なら30時間以上)
- 月の所定労働日数が正社員の4分の3以上
この条件を満たす場合、企業の規模や年収に関係なく社会保険に加入することになります。
ただし、勤務先によっては「社会保険適用事業所」でない場合もあるため、事前に確認が必要です。
② 106万円の壁とその影響
「106万円の壁」とは、アルバイトの年収が106万円を超えると、一定の条件を満たせば社会保険に加入する義務が発生するという基準のことです。
具体的には、以下の5つの条件をすべて満たした場合に、社会保険に加入する必要があります。
- 週の労働時間が20時間以上
- 月の賃金が8万8000円以上(年収106万円以上)
- 雇用期間が2ヵ月を超える見込み
- 勤務先の従業員が51人以上(厚生年金の被保険者数)
- 学生でない(※例外あり)
この「106万円の壁」により、短時間アルバイトでも一定の基準を超えると社会保険に強制加入することになります。
加入すると、手取り収入は減るものの、厚生年金や健康保険の手厚い保障を受けることができます。
③ 130万円の壁と扶養からの外れ
「130万円の壁」は、主に家族の扶養に入っている人に影響する収入基準です。
年収が130万円を超えると、配偶者や親の健康保険の扶養から外れ、自分で社会保険に加入する必要が出てきます。
具体的には、以下のような影響があります。
- 健康保険の扶養から外れ、国民健康保険または勤務先の社会保険に加入
- 国民年金の第1号被保険者となり、自分で保険料を負担
- 保険料の自己負担が発生するため、手取り収入が減少
「130万円の壁」を超えると保険料の負担が増えるため、実際の手取り額が減ることに注意が必要です。
ただし、社会保険に加入することで年金額が増えるなどのメリットもあるため、自身の働き方に合わせて選択することが重要です。
社会保険に加入するメリット
アルバイトでも社会保険に加入すると、手取り額が減ることを懸念する人が多いですが、実は多くのメリットがあります。
特に保険料の会社負担、将来の年金増加、手厚い保障などが挙げられます。
ここでは、社会保険に加入することで得られるメリットについて詳しく解説します。
① 会社が保険料を折半してくれる
社会保険に加入すると、保険料の半額を会社が負担してくれます。
具体的には、以下の2つの保険料が会社と折半されます。
- 健康保険料(医療費や出産手当金などの保障)
- 厚生年金保険料(将来の年金額を増やすための保険)
例えば、国民健康保険や国民年金の場合、保険料は全額自己負担ですが、社会保険なら半額を勤務先が負担するため、実質的に少ない負担で済みます。
これは、フリーランスや個人事業主にはない大きなメリットです。
② 将来の年金額が増える
社会保険に加入すると、厚生年金に加入することになり、将来受け取れる年金額が増えます。
国民年金(自営業など)と厚生年金(会社員など)の違いを見てみましょう。
年金の種類 | 加入対象者 | 受け取れる年金額 |
---|---|---|
国民年金 | フリーランス・自営業 | 基礎年金のみ(満額:約78万円/年) |
厚生年金 | 会社員・アルバイト | 基礎年金+厚生年金(収入に応じて増加) |
厚生年金に加入すると、国民年金に上乗せして厚生年金がもらえるため、老後の生活資金が増えます。
特に、長期間加入すると、年金受給額が大きく変わるため、将来の安定につながります。
③ 手厚い医療・休業補償が受けられる
社会保険に加入すると、健康保険の保障内容が充実し、病気やケガをした際の補償が手厚くなります。
具体的には、以下のような給付を受けることができます。
- 傷病手当金:病気やケガで働けない場合、給与の約2/3が支給
- 出産手当金:産前産後の休業期間中に給与の約2/3が支給
- 出産育児一時金:子ども1人あたり50万円(2023年4月時点)を支給
これらの手当は、国民健康保険では受けられない場合が多く、社会保険ならではのメリットです。
また、厚生年金に加入していることで、障害年金や遺族年金などの制度も利用でき、万が一の際にも安心です。
社会保険加入によるデメリット
社会保険に加入すると、多くのメリットがありますが、一方で注意すべきデメリットもあります。
特に「手取り額の減少」「扶養からの外れ」は、多くのアルバイトやパート勤務者にとって大きな影響を及ぼします。
ここでは、それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
① 手取り額が減少する可能性
社会保険に加入すると、毎月の給与から健康保険料と厚生年金保険料が天引きされるため、手取り額が減少します。
例えば、年収130万円で働く場合、社会保険加入前後での手取り額の違いを見てみましょう。
項目 | 扶養内(社会保険なし) | 社会保険加入 |
---|---|---|
年収 | 129万円 | 130万円 |
所得税・住民税 | 約4.7万円 | 約2万円 |
社会保険料 | なし | 約19万円 |
手取り額 | 約124万円 | 約108万円 |
このように、社会保険に加入すると手取り額が約16万円も減る可能性があります。
特に、配偶者の扶養内で働いていた人にとっては、大きな負担となることがあるため、慎重に判断する必要があります。
② 扶養から外れるリスク
社会保険に加入すると、配偶者や親の扶養から外れる可能性があります。
特に、年収130万円を超えると、健康保険の扶養を外れ、自分で保険料を支払う必要が出てきます。
扶養から外れると、以下のような影響があります。
- 国民健康保険または勤務先の健康保険に自分で加入する必要がある
- 国民年金の第1号被保険者となり、自分で年金保険料を負担
- 手取り額が減少し、家計の負担が増加
特に、扶養の範囲で働きたいと考えている人は、収入を130万円未満に抑えるように調整することが重要です。
また、2023年から「年収の壁・支援強化パッケージ」が導入され、一部の企業では年収が壁を超えても手取り額が大幅に減らないような対策が取られています。
自分の働き方や収入の見込みを考慮し、会社の制度を確認することをおすすめします。
アルバイトが社会保険を回避する方法
社会保険に加入すると、保険料の負担が発生し手取り額が減少するため、扶養の範囲内で働きたいと考える人も多いでしょう。
そこで、社会保険の加入を回避するための具体的な方法を紹介します。
特に「扶養内で働くための勤務調整」「掛け持ちで収入を分散する」ことが重要なポイントとなります。
① 扶養内で働くための勤務調整
社会保険の加入を避け、扶養の範囲内で働くためには、労働時間と収入を調整する必要があります。
特に、以下の2つの基準を超えないように注意しましょう。
- 年収106万円未満(※週20時間以上、従業員51人以上の職場で働く場合)
- 年収130万円未満(※扶養から外れないための基準)
これを実現するために、以下のような働き方を意識しましょう。
- 1週間の労働時間を20時間未満にする
- 1か月の給与が8万8000円未満になるように調整
- 年間の収入が129万円以下に収まるようシフトを管理
- 賞与や残業代を含めても130万円を超えないようにする
特に、勤務時間が週20時間を超えると、企業規模によっては社会保険の加入義務が発生するため、シフトの管理が重要になります。
勤務先に「扶養内で働きたい」と事前に伝えておくことで、勤務調整をしやすくなるでしょう。
② 掛け持ちで収入を分散する
社会保険の加入は1つの勤務先での労働時間・収入によって判断されます。
そのため、1つの職場での収入を抑えつつ、複数のアルバイトを掛け持ちすることで、社会保険の加入条件を回避できます。
掛け持ちを活用する場合、以下のポイントに注意しましょう。
- それぞれの勤務先で週20時間未満にする
- 1か所の収入が8万8000円を超えないように調整
- 年間収入の合計が130万円未満になるよう管理
- 勤務先の規模(従業員51人以上かどうか)を確認
例えば、A社とB社でそれぞれ週15時間ずつ働いた場合、個別の勤務先では社会保険の加入条件を満たさないため、扶養の範囲内で働くことができます。
ただし、年収が130万円を超えると扶養から外れ、国民健康保険・国民年金の負担が発生するため注意が必要です。
このように、働き方を工夫することで、社会保険への加入を回避しつつ、扶養の範囲内で安定した収入を得ることが可能です。
アルバイトの社会保険加入条件まとめ
アルバイトやパートでも、一定の条件を満たすと社会保険への加入が義務付けられます。
「106万円の壁」や「130万円の壁」など、収入基準を意識しながら働くことが重要です。
以下に、社会保険の加入条件とポイントをまとめました。
- 週の労働時間・日数が正社員の4分の3以上 → 加入義務あり
- 106万円の壁:年収106万円以上かつ以下の条件を満たすと加入義務
- 週20時間以上の勤務
- 月収8万8000円以上
- 雇用期間2ヵ月超の見込み
- 勤務先の従業員数51人以上
- 学生でないこと(一部例外あり)
- 130万円の壁:年収130万円を超えると扶養から外れ、自分で社会保険に加入
社会保険のメリット・デメリット
- メリット:保険料の会社負担、厚生年金で将来の年金額アップ、手厚い医療・休業補償
- デメリット:保険料の自己負担増加、手取り収入の減少、扶養から外れるリスク
社会保険の回避方法
- 扶養内で働くために、労働時間や収入を調整
- 掛け持ちで収入を分散し、1つの勤務先での加入条件を満たさないようにする
アルバイトの働き方によって、社会保険の加入が義務付けられるかどうかが変わります。
自分に合った働き方を選び、社会保険のメリット・デメリットをしっかり理解しておきましょう。
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